◇「白鳥の湖」が流れない“つか演出前の熱海”
これは警視庁にその人ありといわれた「くわえ煙草伝兵衛」こと木村伝兵衛部長刑事と、熱血捜査官熊田刑事の心あたたまる感動の物語である。
これは1975年に新潮社から刊行された「熱海殺人事件」の初演版戯曲に書かれた最初の一行です。数あるつか作品の中でも今なお圧倒的な人気を誇り、上演され続ける「熱海〜」シリーズではありますが、この一行を知っている人は少ないのではないでしょうか。1973年に文学座で初演、翌1974年には岸田國士戯曲賞を当時最年少で受賞、つかこうへいの躍進はこの一冊の戯曲から始まったと言っても過言ではありません。その後、無数のバージョンが作られてきましたが、今この“初演版”が上演されることは極めてまれです。
これまで9PROJECTでは「ストリッパー物語」「生涯」「かけおち」「出発」など、70〜80年代のつかこうへい作品を上演し続けてきました。口立てで作られた戯曲にはト書きがほとんどなく、解釈も容易ではありません。しかし私たちは戯曲に一切の脚色をすることなく、ただ真摯に“文字”に向き合っています。決して“つか芝居”の型にはまることなく、どんな表現が可能かを模索し続ける…。つかに直接師事したメンバーだからこそ、一度自分たちの常識を引き剥がして戯曲に向き合うことは“つかこうへい”を理解する上で非常に重要であると私たちは考えています。
「たとえ何十年たとうと、『熱海』は『熱海』の力強さを決して失わないと断言できる」とは、つか自身の弁です。この初演版で、今改めてその“力強さ”を再確認したいと思っています。
- 作
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- つかこうへい
- 演出
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- 渡辺和徳
- 出演
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- 小川智之
- 尾﨑宇内(青年団)
- 高野愛
- 仲道和樹(劇団PATHOS PACK)
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【全席自由】一般
- 3,500円
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【全席自由】学生
- 2,500円